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北斗七星は、実は星座ではない ― ひしゃくを形づくる7つの星の物語

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冬のオリオン座、秋のカシオペヤ座、夏の大三角。日本で星座といえばいくつも名前が挙がるが、四季を通じて存在感を放っているのが、あの特徴的な「ひしゃくの形」をした北斗七星だ。見つけたことがある人は多いはずだが、その正体や、7つの星それぞれの個性まで知っている人はそう多くない。

実はこの北斗七星、天文学的には「星座」ではない。正式には、巨大な星座「おおくま座」のうち、腰から尻尾にかけての7つの明るい星だけを結んだ部分にすぎない。星座の中の特徴的な並びは「アステリズム(星群)」と呼ばれ、北斗七星はその代表例にあたる。おおくま座という大きなクマの姿全体から、いちばん目立つ部分だけを切り出して見ているわけだ。

呼び方は国によっても違う。アメリカでは「ビッグディッパー(大きなひしゃく)」、イギリスでは農具の鋤に見立てて「プラウ」、中国では天帝が乗る車に見立てて呼ばれてきた。同じ星の並びが、土地や時代によって道具にも乗り物にも見えるというのは、なかなか面白い話だ。


ひしゃくの「器」をつくる4つの星

ひしゃくの水を汲む部分、四角い「器」を形づくっているのが4つの星だ。

器の先端、一番上の角にあるのがドゥーベ(おおくま座α星)。ほんのりオレンジ色に輝くこの星は、すぐ下にあるメラク(おおくま座β星)とセットで北極星を探すための目印として知られている。メラクからドゥーベへ線を引き、その長さを約5倍伸ばすと、その先に北極星が見つかる。航海士や旅人が方位を確かめるのに使ってきた、古くからの定番の探し方だ。メラクの名前はアラビア語で「腰」を意味し、おおくま座の腰のあたりに位置している。

メラクから器の底をなぞって進むと、もう一つの角にあるのがフェクダ(おおくま座γ星)。語源はアラビア語で「太もも」。ここから先が器の終わりで、長い柄の部分へと切り替わる境目にあたる。

フェクダの真上、器と柄をつなぐ付け根の位置にあるのがメグレズ(おおくま座δ星)だ。この星には一つ特徴がある。北斗七星の残り6つはすべて2等星なのに対し、メグレズだけは一段暗い3等星しかない。空が少しでも曇っていたり街の明かりが強かったりすると、このメグレズだけが見えなくなり、器と柄が分離した妙な見え方になる。逆に言えば、メグレズまでしっかり見えていれば、その晩の星空はかなり澄んでいるということになる。

ひしゃくの「柄」をつくる3つの星

器の付け根から伸びる柄の部分には、それぞれ個性的な背景を持つ3つの星がある。

柄の始まりにあるのがアリオト(おおくま座ε星)。地味なメグレズの隣にありながら、北斗七星7つの中でもっとも明るい星で、地球からの距離は約81光年と比較的近い。北斗七星の「顔」と言える存在だ。

柄が大きく曲がるカーブの部分にあるのがミザール(おおくま座ζ星)。視力の良い人なら、ミザールのすぐ隣に寄り添うように輝く小さな伴星「アルコル」を見つけられる。この2つの星は、かつてアラビアで兵士の視力検査に使われていたという話が伝わっている。見分けられた者は偵察や弓兵に、見分けられなかった者は歩兵に回されたという逸話だ。スマートフォンの画面で目を使いすぎている現代人にとっても、ちょうどいい視力チェックになる。

柄の最後尾、ひとり離れた位置で輝いているのがベネトナシュ(おおくま座η星、別名アルカイド)。アラビア語で「棺を担ぐ娘たちの先頭」という意味を持つこの星は、青白く美しい輝きを放つ一方で、他の星たちとは全く違う方向へ動いているという特徴がある。

5つ子の星と、はぐれ者の2つの星

北斗七星の星々が同じ方向へ並んでいるのは、実は偶然ではない部分がある。器の底のメラクから柄のミザールまでの中央5つの星は、かつて同じガス雲から同時に生まれた、いわば兄弟にあたる星々だ。天文学では「おおくま座運動星団」と呼ばれ、何億年もかけて同じ方向へ一緒に移動している。

残るドゥーベとベネトナシュは、この5兄弟とは生まれも育ちも別の、たまたま近くを通りかかった他人同士だ。この2つがちょうどよい位置に重なって見えることで、地球から見ると整ったひしゃくの形に仕上がっている。

形は少しずつ変わっていく

星はそれぞれ独自の速度と方向で宇宙空間を動いており、これを固有運動と呼ぶ。中央の5兄弟は同じ方向に進むが、ドゥーベとベネトナシュはそれぞれ別の方向へ動いていくため、北斗七星の形は長い時間の中で変化していく。

5万年ほど前には、まだひしゃくの形にはなっておらず、もっと歪んだ星の集まりだったとされる。逆に5万年ほど先の未来には、ベネトナシュが外側へ大きく引っ張られ、柄が異様に長く伸びた、フライパンのような形に変わっていくと予想されている。今見えている整ったひしゃくの形は、宇宙の時間スケールで見ればほんの一瞬の眺めにすぎない。


季節で向きが変わる理由

北斗七星は北極星のすぐ近くを回っているため、日本のほとんどの地域では一年中地平線に沈まず、天球上をぐるりと回っている(周極星と呼ばれる)。そのため季節によってひしゃくの向きが変わる。春の夜には頭上高くで「ひしゃくをひっくり返した」ような姿になり、秋の夜には地平線近くまで降りて、まるで地面から水を汲み上げているような向きになる。

次に晴れた夜に外へ出たら、ひしゃくの先端から順に7つの星をたどってみてほしい。見慣れたはずの星の並びが、それぞれ違う生まれと未来を持った星たちの、たまたま今だけ重なって見えている姿だと分かると、夜空の見え方が少し変わってくるはずだ。

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