宇宙に、私たち以外の生命はいるのか。
これは人類が大昔から問い続けてきた、もっとも古い問いの1つです。
そして今、その答えが2040年代に出るかもしれない、という計画が実際に動き始めています。
その答えにたどり着くための道のりは、6台の望遠鏡がバトンをつなぐリレーのような形になっています。
宇宙に4台、地上に2台。
それぞれに役割が与えられ、順番に仕事を引き継いでいくのです。
なお、以下の打ち上げ時期などは2026年7月時点の情報にもとづいています。
第1走者・ローマン宇宙望遠鏡
リレーの口火を切るのが、ローマン宇宙望遠鏡です。
これは近い将来に打ち上げが予定されている、NASAの宇宙望遠鏡です。
広い視野で空を見渡し、たくさんの系外惑星を効率よく見つけ出す役割を担います。
まずは候補となる惑星を数多く見つける、いわば「見つける係」です。
生命探しのリレーは、対象をたくさん見つけるところから始まります。
第2走者・PLATO
次に控えるのが、ヨーロッパのPLATOです。
この望遠鏡の特徴は、その目の構造にあります。
多数のカメラを組み合わせた複眼のような設計で、空を広く監視します。
狙うのは「第二の地球」、つまり地球によく似た惑星です。
恒星の前を惑星が横切るときのわずかな影を捉えることで、地球サイズの惑星を探し出します。
第3走者・ARIEL
3番目は、同じくヨーロッパのARIELです。
見つけた惑星が、次にどんな性質を持っているのかを調べる段階に入ります。
ARIELの仕事は、系外惑星の大気を数多く分析することです。
多くの惑星の大気を系統的に調べ、いわば「大気の教科書」を作る役割です。
どんな惑星に、どんな大気があるのか。
その基礎データを積み上げていきます。
第4走者・ELT
そして地上の巨人が登場します。
ELT、超大型望遠鏡です。
この望遠鏡は、六角形の鏡を798枚も敷き詰めた、人類史上最大級の目を持ちます。
その圧倒的な集光力で、これまで見えなかった暗い天体まで捉えます。
宇宙の望遠鏡が広く探した対象を、地上の巨大望遠鏡が詳しく見つめ直す。
役割の分担が、ここでも効いてきます。
第5走者・TMT、そしてつまずき
5番目に予定されているのが、TMT、30メートル望遠鏡です。
日本も鏡の製作などで関わる、大型の地上望遠鏡計画です。
ところが、このリレーは順風満帆ではありません。
TMTは、建設予定地をめぐる問題などから、計画が長く停滞しているのです。
期待される性能は非常に高いものの、実現の時期は今も見通しにくい状況にあります。
リレーの中で、いま一番の不安要素になっているのがこの一台です。
アンカー・HWO
そして最後のアンカーを務めるのが、HWO、居住可能世界天文台です。
これは2040年代を見据えた、この計画の本命機です。
必要とされる技術の一部が、まだこの世に存在しないほどの野心的な望遠鏡です。
恒星の圧倒的な眩しさの中から、そのすぐそばを回る小さな惑星の光だけを取り出す。
そのための、極めて高性能な観測装置が計画されています。
赤色矮星のような暗い星では、生命がいられる領域が恒星のすぐ近くにあります。
つまり生命がいられる条件そのものが、恒星の光に埋もれて観測を難しくする条件でもあるのです。
HWOは、その難題に正面から挑む「トドメを刺す係」です。
まとめ
今回の内容を整理します。
宇宙生命の発見に向けて、6台の望遠鏡がリレーのように役割を分担しています。
候補を見つけるローマン、第二の地球を探すPLATO、大気の教科書を作るARIEL、詳しく見つめる巨人ELT、高性能ながら停滞しているTMT、そして本命のアンカーHWOです。
宇宙に4台、地上に2台。
見つける係から、練習する係、教科書を作る係、そしてトドメを刺す係まで、きれいに役割が分かれています。
私がこの計画で一番惹かれるのは、これが一発逆転の魔法ではなく、地道なバトンリレーだという点です。
1台の望遠鏡がすべてを解決するのではなく、それぞれが自分の区間を走り、次へ手渡していく。
そしてその途中には、TMTのように転びかけている走者もいる。
人類最古の問いのゴールシーンに、私たちはちょうど立ち会える時代にいるのかもしれません。
その答え合わせを、最前列で見届けていきたいと思います。
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